一本の白い絹糸が30以上の手作業によって、美しい黒の反物になっていく。大島紬は、奄美大島発祥で、1300年の歴史がある絹織物です。「一生に一度は着たい高級織物」などと紹介されるのを見てきましたが、その背景をたどっていくと、奄美の人々、特に織子さん(機織)として生きた女性たちの悲しみがあることを知りました。
戦時中、空襲で集落は焼かれ、戦後はアメリカ統治下で孤島と化した大島。極度の食料難から、毒のあるソテツ(デンプン)を食べて、飢えをしのいだと言います。厳しい時代の中で「女は中学を卒業したら、織子として働く」、それが親から定められた人生でした。朝から晩まで紬工場で働く姉妹、家で機織りをする母や祖母の姿、、、、。70代の女性は、「なんでこんな家に生まれちゃったんだって、毎晩、月を眺めながら泣いた」と、当時の気持ちを話してくれました。92歳の現役織子さんは「今は本当に楽しいよ、機織りがなかったら、私は、ない」と言いました。紬とともにあった人生。カタン、カタンという筬の響きには、島人の悲哀、記憶が内包しています。

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